とあるホームレスの話

友人から聞いた話だ.

友人(A子としよう)は,とてもコミュニケ―ション能力の高い子で,どんな人とでも気軽に話を始めてしまう.

ある日,公園に遊びに行った時,ホームレスの男と話をしたのだそうだ.

その中で,「今,幸せか?」という話題になった.

ホームレスの男はA子に次のように言ったそうだ.

「あぁ,幸せだよ.私たちは世間的に見れば,地位も金もなくて不幸に見えるかも知れない.だけど,社会とか人間関係とかそういったものに縛られることがなくなって,本当の意味での自由を感じている.これを幸福と言わずして何と言えるのだろうか.」

 

このエピソードは,現代の私たちの生き方に疑問を投げかけていると思う.

金や地位,名誉など我々が社会で生きる以上は手にしたいと思うものは多様であるし,物質的な豊かさの追求もまた目的の一つとなり得る.

しかしながら,そのようなものを得るために送る社会生活では,様々な『縛り』が存在していることもまた事実であろう.

現に,働きながら精神に異常をきたし,睡眠薬精神安定剤を飲みながら仕事を続けている人だっているし,憂鬱な顔をしながら会社に向かう人もかなりの数いる.

そのような暮らしを,「みんな感じている事だから」と受け入れてしまい,我慢しながら毎日を生きていくのも決して悪いことではないだろう.

だが,本当に『幸福な暮らし』を,『人間らしい生き方』を追究するとしたのなら,そのような生き方で良いと言えるのだろうか?

物質的な喜び・価値観を脱却し,精神的な豊かさを目指す段階に私たちはきているのではないだろうか?